
読者の皆さんは姫路モノレールって、ご存知でしょうか? 「姫路城」で有名な兵庫県姫路市にあったモノレールです。1966年に開催された「姫路大博覧会」のアクセス交通機関として計画されましたが、開業は博覧会開幕に間に合わず、会期途中での営業開始となりました。姫路駅前から南西に伸びた路線は全長約1.6キロと短いものでしたが、いずれは臨海部の工業地帯まで延長して通勤路線とする構想もありました。しかし、多額の赤字を抱えて1974年に休業し、1979年にはそのまま廃止されてしまいました。このように短命なうえ、姫路城と無関係な位置にある路線でしたから、地元以外では知名度が低くくて初耳の方も多いと思います。廃止から数えても30年を経過しましたが、支障がない部分の線路は、そのまま放置されています。山陽本線を乗り越えるトラス橋は、山陽本線が高架化されるまでは残っており、上を通る山陽新幹線の列車内からも見えましたので、正体を知らないまま線路をご覧になっている方も多いと思います。
実は、残っていたのは線路だけではありません。終点の手柄山駅は、手柄山中央公園という丘の頂上付近の地下にあった駅で、車庫も兼用していました。廃止となった後も、車両はそのまま地下駅で保管されていました。駅に通じる線路が通っていた入口は、コンクリートでしっかりふさがれていましたので、車両は風雨にさらされることなく、日光による退色もないため、保管には理想的な環境で眠り続けていたわけです。
この公園内には、姫路市立水族館があるのですが、施設の老朽化が激しく大掛かりな改修が必要なほどでした。このため、モノレール駅の一部を水族館の新館として改装する事になり、合わせてモノレール車両の公開展示を行うことになりました。改装工事では、車両を外に出す必要が生じ、将来の恒久展示に先駆けて11月15日に1日だけ一般公開が行われました。この写真は、その当日に撮影したものです。将来の展示場所は、地下駅の跡になるため、このように屋外で公開されるのは、これが最後になるのかもしれません。
姫路モノレールは、米国の飛行機メーカーであるロッキード社が開発したロッキード式モノレールを採用していました。この方式は、通常の鉄道と同じようなレールを使い、鉄車輪で走るという特徴があります。ゴムタイヤを使う一般的なモノレールよりも高速走行が可能で、遠距離路線に向くと言われていました。ここのほかに、小田急向ヶ丘遊園モノレールでも採用されました。しかし、向ヶ丘遊園モノレールも2000年に休止され、2001年には廃止されています。しかも、残念なことに車両は残されていません。
すでにロッキード社も、その技術を導入した川崎航空機(現・川崎重工)も、モノレール事業から撤退してますので、この車両は地下から発掘された貴重な工業遺産と言えるでしょう。