
青森と函館を隔てる津軽海峡を横断する航路と言えば、国鉄が運航していた青函連絡船を思い浮かべる人は少なくないでしょう。ご存知のように、JR発足の翌年である1988年3月13日に青函トンネルが開通し、青函連絡船は廃止されてしまいました。つまり今年は、青函連絡船廃止20周年という事になります。
青函連絡船は、旅客と貨車の輸送が主な使命でしたから、津軽海峡を渡るトラックなどの輸送は、その時代からカーフェリーが主役でした。これは青函トンネルの開業後も変わらず、自動車なしでの利用もできる東日本フェリーと自動車なしでの利用はできない3社の計4社が、競うように青森~函館航路を運航しています。このうち、自動車なしでの利用ができない3社の内2社は、青函フェリーという名称で共同運航をしていますので、実質的には東日本フェリー・道南自動車フェリー・青函フェリーの3航路競合となっています。
政府の規制緩和を受け、道南自動車フェリー・青函フェリーは2000年に旅客輸送の許可を得て自動車なしでの乗船も可能になりました。自動車がないと利用できなかった時代は、実質的にはトラック専用に近かったため旅客設備は簡素で、これは今も変わっていません。その代わり、東日本フェリーよりも若干安い運賃になっています。
青函連絡船に代わって、津軽海峡横断航路の主役になったのが、東日本フェリーです。青函トンネルブームで青森・函館を訪問する観光客が増え、JRの津軽海峡線利用者が急増した事に対抗して、超高速船のジェットフォイル(航空機メーカーのボーイング社が開発した水中翼船)「ゆにこん」を1990年に導入するなど旅客輸送に力を入れました。この「ゆにこん」は、青函トンネルブームの終焉と共に、冬季の欠航率の高さと車が積めないという問題点がクローズアップされ1996年に引退します。翌1997年には、2代目「ゆにこん」が代わりに就航しました。こちらは三菱重工が開発した超高速カーフェリーでした。カーフェリーですが、重量があるトラックは搭載が不可能で、乗用車・バスのみしか載せず旅客専用船として使われていました。やはり冬季の欠航率が高く、2000年秋、冬季休航に入ったまま再開する事なく、早くも引退してしまいました。
この2回の超高速船運航実績を踏まえて、昨年9月に登場したのが、超高速フェリー「ナッチャンRera」です。世界的な超高速フェリーブームの先鞭となったウェーブピアサータイプ(双胴式で浮力を水面下の船体で負担)を開発したオーストラリアのインキャット社で建造した船で、このタイプでは世界最大です。さらにトラック搭載にも対応、短時間で車の乗降が可能なように、車両積込み口の幅が広く、複数の車が同時に乗降が可能になっています。これを活用すれば短時間での折返しが可能になるはずです。
青函連絡船廃止後20年目にして登場した、まさに新世代のフェリーです。
青函連絡船では3時間50分かかっていた青森~函館を、現在の冬季ダイヤでは2時間15分、4月1日からの通常ダイヤでは2時間で結びます。比較的短時間の航海ですが、カフェも備え、写真のようにエコノミクラスの窓際はフリースペースとされ、ソファーやテーブルと椅子が配置され、海を見ながら快適に過ごすことができます。これは、トンネルが大半の列車にはない魅力ですね。青森・函館共にフェリーターミナルは駅から少し離れていますが、路線バスがありますので、車なしの乗船でも大きな不便はありません。
先日、低気圧が接近中の荒れている中で乗船しましたが、波の高さの割には揺れが少なく、船の優秀性を感じました。
今年の5月2日には、同タイプ2隻目の「ナッチャンWorld」がデビューする予定です。これにより増便が実現し、より利用しやすいダイヤになるそうです。