
首都圏を代表する観光地“箱根”といえば、小田急のロマンスカーから箱根登山鉄道、箱根ケーブルカー、箱根ロープウェイと乗り継いで芦ノ湖畔の桃源台へ向かい、湖上を海賊船に乗って箱根町や元箱根に渡るのが、典型的な回り方です。小田急グループが“箱根ゴールデンコース”と名付けて、古くから力を入れているだけあって、今でも色あせない魅力的な周回コースとして人気があります。
このコースの中心的存在である箱根ロープウェイが、発表から約6年半の歳月をかけてリニューアルされ、この6月1日から全面的に新設備での営業を開始しました。5年前にまずは早雲山・大涌谷間が新設備となり、残る大涌谷・桃源台間は1年間の運休を経てこのたび新設備で運転を再開したわけです。
新しい箱根ロープウェイに採用された設備は、フニテル方式複式単線自動循環式と呼ばれる技術です。これはヨーロッパで開発された最新鋭のロープウェイ技術で、大きな輸送能力とロープウェイの弱点である強風に強いことが特徴になっています。その上、ロープウェイの動力は以前から電気モーターですから、環境にやさしい乗り物でもあるのです。
一般的なロープウェイには、鉄道で言えばレールに相当する支索と呼ばれる動かないロープで重量を支え、モーターで回す曳索と呼ばれるロープで引っ張って動く複線式と支曳索と呼ばれる1本のロープが重量を支えつつ回る単線式の2種類があります。また客車にあたる搬器が2台あって交互に往復する方式を交走式、多くの搬器が一定の間隔で自動的に次々と駅を出発し一定方向に回る方式を自動循環式と呼びます。単線式の自動循環式・・・単線自動循環式は、“ゴンドラ”または“ゴンドラリフト”とも呼ばれ、全国のスキー場で多く見られます。
箱根ロープウェイで採用された複式単線自動循環式とは、2本のロープを用いますが、支索と曳索というように役割が異なるのではなく、2本とも支曳索なので「複線」ではなく「複式」なのです。2本の支曳索と言っても、実際は1本のロープで、これを二回りさせて二重の輪にしているのです。フニテル方式というのは、ロープの位置です。写真をご覧いただければわかるように、搬器の幅よりも左右の支曳索の間隔が広く、両側で両親に手をつながれた子供のような形でロープにぶら下がっています。こうすることで、左右に揺れにくくなり横風に強いわけです。
さらに搬器が大型化され、以前は13人乗り(一部立席)だったのに対して全員着席の18人乗りになっています。実はこの搬器、ロープウェイの本場であるスイス製で、現地での元々の設計は着席18人立席6人となっているのですが、箱根では立席を使わないようにしていますので、かなりゆったり乗ることができます。もちろんバリアフリー対応で、車椅子ごと乗り込むことができますし、駅にもエレベーターやスロープが整備されています。
さっそく架け替え後、最初の週末である先週末に行って来ました。搬器は、前後左右のほぼ全面が窓になっていて展望もバツグンです。とても静かで揺れも少なく、運転速度が速くなったことで乗車時間も短くなって、ますます快適な空の旅となりました。早雲山・大涌谷間が架け替えられた直後に乗りに行ったときは、霧の中でぜんぜん展望が利かなかったのですが、静かすぎて動いている感覚がなく、まるで空中浮遊体験でした。唯一、残念な点は以前は早雲山から桃源台まで乗ったままで直通できたのですが、新設備では大涌谷で乗換えが必要になった事です。ただ大涌谷は、多くの訪問者が下車して見物する観光スポットですから、これは大きな欠点ではありません。
一昨年デビューした新形ロマンスカー「VSE」や今春には海賊船も1隻新造されています。電車で行けば渋滞知らずです。ロープウェイも輸送の能力が高まったので、混雑しても以前ほどは並ばないはず。ますます魅力の高まった箱根ゴールデンコースに行ってみませんか。
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