
「地下鉄の電車はどこから入れるのでしょうね? それを考えると夜も寝られない」という地下鉄漫才が一世を風靡したと書くと、筆者の歳がばれてしまいそうですが、地下鉄でなくても電車をどこで作って、どうやって運んで来るのか、興味がある方は多いのではないでしょうか。
作っているのはもちろん車両メーカーの工場です。ただ、JR東日本では通勤形電車の一部を自社の工場で作っていますし、他の鉄道会社でも自社で作ることがときどきあります。現在、JRや大手私鉄向けに電車やディーゼルカーを作っているメーカーは、新潟トランシス(新潟県)、東急車輛製造(神奈川県)、日本車輛製造(愛知県)、近畿車輛(大阪府)、川崎重工業(兵庫県)、日立製作所(山口県)があります。会社名のあとのカッコは鉄道車両担当する主な工場の所在地ですが、こうしてみると西日本に偏っていることにお気づきになるでしょう。
工場は西日本にあっても、電車の多くは首都圏で使われます。つまり、電車を注文した鉄道会社に運ばないとなりません。乗用車なら、トレーラーに載せて運んでいるシーンをよく見かけると思いますが、電車はどうしているのでしょう。さすがに電車を運ぶ貨車というのは、背が高くなりすぎて無理で、実は、自前の車輪でレールの上を走っていく場合が多いのです。ただ、電気や信号の方式などの関係で自走できないことも多く、そのような性能上の問題はなくてもいきなり他社の線路を勝手に走るわけにはいきません。発注した鉄道会社で公式試運転を終えて、初めてメーカーからの引渡しが完了するのです。ですから、電車ですが貨物列車として機関車に引っ張っていかれる事が多いのです。これを専門的には「甲種車両輸送」と呼びます。甲種というからには乙種もあって、これは小型の車両を貨車に載せて運ぶ方法だったのですが、貨車に載るぐらいならトラックで運べますから、使われることもなくなり、いまでは乙種車両輸送という扱いは廃止されてしまいました。
前述の会社のうち、新潟トランシス以外の工場はJRの駅と引込み線で結ばれており、工場からレールに乗ったままで出荷されます。写真は、神戸市の川崎重工業兵庫工場から出荷されるJR北海道の新形特急電車で、この10月から札幌-旭川間で使われます。
このように鉄道で運ぶ以外には、トレーラーで道路を運んだり、船で運ぶこともあります。川崎重工業兵庫工場や日立製作所笠戸工場は海に面してますので、工場内から、直接、船積みする事もあります。先日開通した台湾の高速鉄路(新幹線)の電車が日本から船で運ばれたほか、国内でも福岡県の車両基地に搬入されるJR西日本の新幹線電車や宮城県の車両基地に搬入されるJR東日本の新幹線電車は、博多港や仙台港まで船で運ばれています。皆さんも船旅経験のある電車に乗っているかもしれませんよ。